最小発症菌数
発症に必要な菌数、最小発症菌数、ノロウイルスでは「最小発症ウイルス数」ということになりますが、言いにくいですね。まとめて言えば「病原体数」となります。これまた言いにくい。
上の写真みたいに、トイレで手に○○◯がついてしまったとしましょう。ノロウイルスの患者だとしたら、どの位の数のウイルスが含まれているでしょう? 10万人分の感染量です。本当はキリよく1万人分を指につけてみたのですが、写真では見えませんでした。実は○○◯ではなくて、チョコレート0.01gで撮影しました。○○◯1gあたりノロは1〜10億個、10〜100個の摂取で感染として計算しました。
ノロウイルスはチャンピオン級ですが、どのくらいの数の菌、ウイルスを食べてしまったときに発症するのかは、病原体の種類ごとに大きく異なります。胃酸に耐えて腸に届くしぶとさ、腸内に五万といる(実際には100兆います)様々な細菌(常在菌)の間で生き抜く図太さなど、菌の能力はさまざまです。それ加えて、感染したひと個人々々の感受性もあります。免疫力が劣っている小児、老人、妊婦(妊娠すると子供を体内から排除しないように、女性は自らの免疫力を低下させます。頭が下がります)などは感染しやすくなります。また、ノロウイルスでは血液型によって感染しやすさが変わると言われています。一般の人が食中毒病原体に感染して発症するのに必要な病原体数は、大ざっぱに言って10万以上です。しかし、ノロウイルス、腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクター、クリプトスポリジウムでは、100〜1000という少数で発症します。
これまた大ざっぱな言い方ですが、発症必要数が10万だと、食品を汚染した菌がその数にまで増殖するための時間が必要です。汚染だけで10万を超えることは滅多にありません。従って、できたらすぐに食べたり、食品を低温で管理することで予防できます。しかし発症必要数が100だと、汚染だけでも危険です。トイレに行ったあとで手をよく洗わないで調理しただけでも、食べた人を感染させてしまいます。もちろん菌の増殖があればもっと危険ですし、増殖に必要な時間は短くて済みます。という訳で、ノロ、O157、カンピロには、特別な注意が必要になります。
主な食中毒病原体の発症に必要な数を下の表に挙げます。病原体ごとにずいぶんと違うものだと思われるでしょう。