PCの+アルファ

サニテーションPC

 

サニテーション・予防コントロール(PC) の対象は、 リステリア・モノサイトゲネス(LM)とサルモネラ、およびアレルゲンです。HACCPが予防コントロール(PC)に発展した理由のひとつがLMですので、まずLMから話をしましょう。

私がHACCPを勉強し始めたのは、1998年でした。そのころは、ハザード(食中毒を起こす病原菌などの危害要因)の中で「起こりやすく、かつ起きた時の被害が深刻な」ものはHACCPで取扱い、そうでないもは前提条件プログラム(PRP)取り扱う、と説明されていました。なのにちょうどその頃から、LMが数多くの深刻な被害をもたらしていることが分かってきました。

LMは1990年代から注目された病原菌で、過酷な環境でも生き残る能力が高い、冷蔵庫温度でも増殖する、そして病原性が高い、という嫌な性質を合わせ持っています。例えば工場でハムをつくる時、加熱工程の後にスライスし、包装するまで、ハムは裸で工場の環境にされされています。もしスライサーやベルトコンベアがLMで汚染されていたら、ハムも汚染されて出荷されます。黄色ブドウ球菌やサルモネラも環境に広く潜んでいる菌ですが、冷蔵庫の温度(米国では4℃)ではほとんど増殖しません。しかしLMは、増殖速度は落ちるものの、致死量にまで増えることがあります。若い人には病原性が低いのですが、お年寄りには脳髄膜炎を、妊婦には死産を引き起こす事があり、アメリカではサルモネラに次いで人を殺す食中毒病原体です。

LMは明らかに「起こりやすく、起きた時は深刻な」ハザードなので、1998年の常識ではHACCPで取り扱うべきです。この菌への対処法は工場環境の消毒です。これは「HACCPと予防コントロールの違い」でお話したように、HACCPの守備範囲を超えた、前提条件プログラムの仕事です。しかしPCでは、LMの管理を前提条件に任せないで、CCP並みに厳重に管理することにしました。

LMだけでなく、サルモネラも過酷な環境での生存力が高く、工場の思わぬ場所で生き延びています。そして食品に紛れ込んで事故を起こします。なので、PCでは、LMとサルモネラを名指しして、サニテーションPCの対象にしています。この2種の菌をターゲットとして、スライスハムが直接触れるような箇所を徹底的に清掃し消毒すること。それに加えて、そのような箇所やその周辺で定期的に菌検査をする「環境モニタリング」が求められています。

サニテーションは一般に「衛生化」と訳されるので、微生物が対象というイメージが強いのですが、PCでのサニテーションPCにはアレルゲンも含まれます。アレルゲンでは消毒はありませんが、徹底的に清掃して作業台や機器を介してのアレルゲンの交差接触を予防します。

2018/6/17