サプライチェーンPC

 

HACCPは、”From farm to table(農場から食卓まで)”を旨としています。これは原材料の製造者から加工業、流通業、そして販売や飲食業までのサプライ・チェーンのみんながHACCPをやりましょう、という標語です。しかし裏を返せば、そうしなければ安全が守れない、というHACCPの弱点でもあるのです。

例を挙げて説明しましょう。2011年に焼肉レストランでユッケによる腸管出血性大腸菌の大規模食中毒がありました。5人が死亡し、200人近い患者が発生しました。この店はネット通販で生食用の牛肉を購入し、これが汚染されていたことが食中毒の原因でした。通販業者は十分な衛生管理がされていない肉を「生食用」として売った責任がありますが、買った側もネット広告だけで信用した責任があります。生で肉をお客さんに出す以上、腸管出血性大腸菌はHACCP上のハザードであり、CCP管理が必要です。しかし管理する責任はレストランだけでなく、納入業者にもあります。納入業者を通販サイトの文言だけで信用してもよいのでしょうか。

2016年には、生の冷凍メンチカツでやはり腸管出血性大腸菌の食中毒がありました。このメンチカツを購入したレストランが十分に火を通すことなく提供して、患者が出ています。メンチカツは生肉のまま冷凍されていますから、それを揚げる工程はCCPになります。しかも冷凍品ですから相当低い温度のまま油に入れられることもあるでしょう。そのような事態への十分な対処法を、製造業者は販売先に通知すべきだったと思います。

以上2つの例は、一つの業者が製造から提供までやっていれば、CCPががよく見え、失敗のない管理が行われていたかもしれません。しかし事業者が分断されていたので、CCPが自社になく見えにくくなっていました。自社が提供する食品の安全性が原材料に大きく依存している場合には、納入者による安全性の証明が極めて重要です。いっぽう出荷した製品のCCPが販売先にある場合、それを正確に伝えないと失敗が起こります。これまでのHACCPでも、納入者からの保証書や販売先に対する包装表示という形で、安全性の確保に努めてきました。しかしそういった文書や、その確認程度で済ませるのは不十分だ、というのがPCの考え方です。

そのため、それぞれの事業者はハザード分析を行い、PCによる管理が必要なハザードを見極め、その管理点(HACCPのCCPに相当する)が納入業者にあった場合は、自ら納入業者を査察したり、第三者の認証などで安全性を確認することを義務化しています。また、管理点が販売先にある場合は、販売先にそれを伝え、かつ「製品を適切に(中心部まで加熱するなど)取り扱います」という書面での返答を求めます。こうすることで、ハザードを管理する責任を誰が負うのかを明確にしています。

2018/6/17