新潟薬科大学 薬学部
生化学研究室

研究テーマ

生物活性を示すタンパク質の生化学、抗酵母タンパク質キラートキシンの作用機構の解明

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酵母が産生するタンパク質、キラートキシンはほかの酵母を殺菌することができる抗生物質の一種です。その中でもHM-1は比較的安定性が高く衛生・薬学的に応用が期待されましたが、病原性酵母のカンジダやクリプトコッカスの一部に作用しない点が指摘されていました。HM-1は細胞壁と相互作用、受容体に結合、最終的にβ-1,3 グルカン合成酵素活性を阻害し、酵母を殺菌するとされています。しかし細胞膜上に存在するとされているHM-1受容体分子はいまだ同定されていません。これまでの研究の結果から、HM-1は感受性酵母のHM-1受容体には結合しますが、耐性酵母やカンジダのものには結合しないことが明らかになりました。これらのことからHM-1受容体はHM-1に対する酵母の感受性に関与し、抗菌剤の標的分子となることが期待され、受容体を同定しHM-1の作用機構を解明することは新規抗菌剤の開発・発展に大きく寄与すると予想されます。

 

 

キラートキシンの抗イディオタイプ抗体に基づく抗真菌医薬の開発

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酵母が産生するHM-1キラートキシン(HM-1)のキラー活性を中和する活性を有する単クローン抗体(nmAb-KT)を抗原として、遺伝子組換えの技術を用いて単鎖可変部抗イディオタイプ抗体(scFv抗イディオ抗体)のcDNAライブラリーを作成しました。このライブラリーについてファージディスプレイ法を用いてパンニングを行い、大腸菌にscFv抗イディオ抗体を産生させて、抗真菌活性を有するscFv抗イディオ抗体を得ます。scFv抗イディオ抗体は、Candida 属や Cryptococcus属等の病原性真菌類に対して抗菌活性を示す可能性があります。scFv抗イディオ抗体遺伝子に突然変異誘発法を用いて更に有効な抗イディオ抗体を開発するとともにこれらの遺伝子をヒト抗体遺伝子に移し換えることにより、ヒト化抗体を創製して抗体医薬としての可能性を明らかにします。抗体医薬は医薬品として数多くのすぐれた長所を有するので、抗真菌抗体医薬創製の暁には今世紀に増大する多くの真菌類感染症の患者さんを救える可能性があります。