環境に優しい抗真菌剤(農薬・医薬品)の開発

環境にやさしく安全性が高い天然の抗菌性蛋白質は、抗菌剤として大きな潜在的需要を有する。抗菌性蛋白質として多数の生物種に存在するディフェンシンは、共通の特徴を保持しつつ構造的な多様性を持っている。近年、ヒト及び植物病原菌に対する抗菌活性や抗HIV活性および腫瘍免疫誘導への関与など、ディフェンシンの多様な機能的特性が明らかとなり、遺伝子および蛋白質レベルでの研究展開が注目されている。

我々は、これまで独自に単離したアブラナ科作物のカラシナ由来ディフェンシンの遺伝子構造解析、ヒト及び植物病原菌に対する増殖抑制効果、組換え酵母による低コスト大量生産システムの開発(図1)、作用メカニズム解析(図2)などのディフェンシンに関する基盤的な新知見の蓄積を有し、ディフェンシンの新規抗菌成分としての可能性を明らかにしてきた。特に、ディフェンシンの作用メカニズムの解明は、安全性を確保し、抗菌剤を最も効果的に使い、有効性を高めることにつながる。また、本課題は、農林水産業、食品関連産業分野、バイオ産業分野及び医薬品産業分野にまたがる天然有機系抗菌剤に対する消費者の潜在的需要を喚起し、市場占有率の向上および抗菌剤市場の拡大に貢献し、新事業創出に繋がる。