新潟薬大発ブランド酒

我が国における清酒産業は古くから続く産業の1つである。その歴史は、奈良時代にはすでに米を原料として麹菌の糖化力を利用した並行複発酵による醸造が行われ、得られた濁り酒に木灰を添加することで清澄し、現在のような透き通った酒を製造する技術を獲得していたとされている。昭和50年代にピークを迎えた清酒の消費量は、その後緩やかな減少を続け、平成28年には約30%まで減少している。減少の一途をたどる清酒消費量に対し、リキュール類や果実酒の消費量は上昇を続けており、これは、若い世代を中心とした食の欧米化に伴うワインなどの洋酒の消費量増加や甘口で飲みやすい低アルコール飲料へと嗜好が変化していることが原因として挙げられる。一方、海外では、近年の和食ブームに伴い日本酒の需要が高く、特に香港や台湾、アメリカへの輸出量は増加傾向にある。海外で人気な吟醸酒や大吟醸酒などの特定名称酒に注目すると、フルーティで香り高く、飲み口が爽やかといった特徴がある。特定名称酒は国内でもわずかに消費量が増加しており、海外と国内のニーズは近いものと位置づけられる。

本研究では、現在のニーズの1つであるフルーティな香りを構成する香気成分を有する清酒の醸造に貢献できる吟醸香高生産酵母の育種開発を目的としている。吟醸香高生産酵母の育種には、新潟県の清酒産業の活性化、原料である米から製品の酒までの6次産業化による農業の活性化を考慮し、親株として新潟県醸造試験場で育種されたS9arg株を活用している。S9arg株はカプロン酸エチルを高生産する株であるため、高付加価値香気成分である酢酸イソアミル高生産変異株をこの株から取得することでより吟醸香の強化された清酒の製造が可能になることが期待されます。

図1 本研究室で開発した日本酒の小仕込み評価系