複合微生物系による新しい微生物利用(発酵)技術に関する研究
これまでの微生物学あるいは微生物利用技術の多くが、自然界から微生物を純粋分離して、個々の微生物の性質や機能を調べてそれを利用する方法で発展してきました。しかし、自然界の微生物達はそれぞれ単独で生きているわけでなく、異なる種の微生物同士がお互いに助け合ったり、縄張り争いをしながら生息しています。こうした「複合微生物系」についての知見を蓄積し、微生物群集としての機能を利用することが、これからの微生物利用技術の発展に重要です。
本研究室では「複合微生物系」のモデルとして廃水処理プロセスを選び研究を進めています。特に、廃水中の有機物を天然ガス(メタンガス)に変換する嫌気性廃水処理プロセス「メタン発酵法」に注目して、プロセスで働く微生物群集の構造と機能の解明を進めています。
こうした研究は、エネルギー生産型の廃水処理プロセスの開発やその高速度化・高効率化を通じて社会に貢献するだけでなく、微生物群集の機能を利用する新しい微生物利用(発酵)技術の開発に向けた研究基盤としても大きな意義をもつと考えています。
この研究に関する主な学会発表・論文など
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井口晃徳, 久保田健吾, 稲葉愛美, 原田秀樹, 大久保努, 上村繁樹, 長町晃宏, 多川正, 押木守, 荒木信夫, 瀬戸雄太, 幡本将史, 山口隆司, 高橋優信「下水処理DHSリアクターの運転条件がウイルス除去性能に及ぼす影響」第51回日本水環境学会年会 (2017年3月)
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Akinori Iguchi, Hiroyuki Nagai, Makoto Tachibana, Tsutomu Okubo, Mayumi Hayashi, Shigeki Uemura, Takashi Yamaguchi, Toru Shigematsu, Kengo Kubota and Hideki Harada “ Microbial community composition of practical-scale DHS reactor treating municipal wastewater in India.” Water and Environment Technology Conference 2016, WET2016 (Aug. 2016)
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Yue-Qin Tang, Toru Shigematsu, Shigeru Morimura and Kenji Kida “Dynamics of the microbial community during continuous methane fermentation in continuously stirred tank reactors.” Journal of Bioscience and Bioengineering, 119(4), 375-383 (April, 2015)