新潟薬科大学 応用生命科学部
食品・発酵工学研究室

未培養微生物の分離培養技術に関する研究

ドイツのKoch先生が、微生物の検出・計数と純粋分離が同時にしかも簡便に行える、寒天平板培地を用いた方法を考案しました。この方法により微生物学は飛躍的に進歩し、今でも微生物学および微生物関連技術を支える重要な方法になっています。ところが近年、自然界の微生物のうち汎用される寒天平板培地で培養可能なものはわずか0.001~15%くらいであるということが分かってきました。いわゆる"Great Plate Count Anomaly"の問題です。

一方で、例えば1 gの土壌試料の中には、100万種以上の原核微生物が生息していると推定されています。ところが、これまでに純粋培養に成功して性質が調べられている原核微生物は、わずか2万種以下です。これらのことから考えると、自然界には未だ調べられていない未知の微生物が圧倒的に多く存在していることになります。

本研究室では、こうした未培養微生物を分離培養することで、未だ知られていない微生物の性質・機能を明らかにする研究を進めています。遺伝子組換え技術が発展したおかげで、ある程度ならば、微生物の機能を改良あるいはデザインすることも可能になってきました。しかし、自然界から分離される微生物の方が優れた機能をもつ場合も少なくないため、未知の微生物を探索する重要性が再び注目されています。未培養微生物の中には、ヒトや地球の健康のために役に立つ、非常に優れた能力をもっているものもいるかもしれません。

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この研究に関する主な学会発表・論文など

  • 井口晃徳, 佐々木波輝, 長谷川大地, 林真由美, 原田秀樹, 重松亨「ファージディスプレイ法を用いたShewanella algae菌体特異的ペプチドの選抜と菌体回収への適用」土木学会論文集G (環境), 72 (7), III-325-III-332 (2016年12月)
  • 倉島優仁, 千葉有紀, 佐藤江美, 野村一樹, 林真由美, 井口晃徳, 重松亨, 幡本将史, 山口隆司, 原田秀樹「下水処理UASBプロセスに生息する未培養微生物群の検出と分離培養の試み」第51回日本水環境学会年会(2017年3月)
  • 重松亨「第22章 食品・環境と難培養性微生物」大熊盛也,工藤俊章監修「難培養微生物研究の最新技術II」ISBN978-4-7813-0183-9, pp. 2412-247, シーエムシー出版 (2010年4月)